音響計測 技術コラム
無響室における「暗騒音」の重要性とは?
2025年4月15日
- HBK × Sonora 音響計測ソリューション
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音響パワー測定
暗騒音、それは“測定の敵”
無響室や半無響室といえば、吸音楔が敷き詰められた“無音の空間”をイメージされるかもしれません。
しかし実際の測定現場では、「室内暗騒音(background noise)」という測定の精度を左右する見えない敵が存在します。
この“暗騒音”は、空調音、設備機器の微振動、配線貫通部からの音漏れなどによって発生し、測定対象音に混入してしまうことで、正確なデータ取得を阻害します。
規格が示す“-10 dBルール”
ISO 3744:2010やISO 3745:2012など、音響パワーレベル(PWL)測定に関する国際規格では、以下のようなルールが定められています:
測定対象音よりも、暗騒音は10 dB以上低いことが望ましい。
例えば、測定対象の出力が40 dBであれば、室内暗騒音は30 dB以下(周波数毎)である必要があります。
これにより、補正係数K1の計算誤差が小さくなり、信頼性の高い測定が可能になります。
補正係数K1とは?
測定式の一部を見てみましょう:
LW = (Lp – K1 – K2) + 10log(S/S0)
ここでK1は、暗騒音の影響を差し引くための暗騒音補正値です。
この値が安定していない、あるいは大きすぎると、測定結果LW(音響パワーレベル)自体が信用できなくなってしまいます。
特にカメラやセンサ、静音モーターなど、30~40 dBの小さな音を対象とする測定では、K1の影響が非常に大きくなります。
暗騒音低減は“部屋の設計”から始まる
こうした背景から、暗騒音を抑えるには以下のような対策が求められます:
- 空調の静音設計(消音器や低風速化)
- 貫通部の遮音処理
- 室内音源(振動機器や照明トランスなど)の排除
- 吸音材の性能最適化(特に低周波域)
これらを踏まえてSONORAでは、独自の BFW(Broadband Fractal Wedge)を用いた高性能吸音構造を設計。
室内暗騒音25 dB以下(A特性)の空間を実現し、HBKの高精度測定器との組み合わせで測定環境を最適化しています。
SONORA × HBKで叶える、確かな測定環境
測定対象が低出力化する昨今、測定環境もまたそれに応じた「静けさ」が求められます。
HBKのType4204基準音源やLAN-XI測定システムは、暗騒音が十分に抑えられた空間でこそ、そのポテンシャルを最大限に発揮できます。
SONORAの無響室は、測定音より-10 dB以上の静寂を保証し、K1補正の安定性を支えることで、
測定データの信頼性を高め、製品の静音設計・開発を支援します。
まとめ:静寂は、精度の“インフラ”である
無響室の静けさは、単なる“快適さ”ではありません。
それは精密な音響測定の基盤であり、開発の判断を左右する“見えないインフラ”です。
測定音より-10 dB。
それが、信頼できる測定のための最低条件。
暗騒音を制する者が、測定を制します。
SONORAとHBKのトータルソリューションで、次世代の静音開発環境をぜひご体感ください。
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