音響計測 技術コラム
K2補正値とは?-2次高調波歪みによる測定誤差とその補正の重要性
2025年4月23日
- HBK × Sonora 音響計測ソリューション
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音響パワー測定

音響測定において、より正確なデータ取得を目指す上で避けて通れないのが「K2補正値」です。本記事では、K2補正値とは何か、なぜ必要なのか、そしてその活用方法についてわかりやすく解説します。
K2補正値とは?
K2補正値とは、2次高調波(2nd Harmonic Distortion)によって生じる測定誤差を補正するための数値です。音響信号をスピーカーなどで再生する際、理想的には純粋な正弦波が出力されるべきですが、実際には機器の非線形性により高調波(原音の整数倍の周波数成分)が混ざります。特に2次高調波は、音圧測定や周波数応答の解析において誤差の原因になります。
なぜK2補正が必要なのか?
例えば、音響機器の測定で入力に1kHzの信号を与えた場合、2kHzの成分(2次高調波)が意図せず出力されてしまうことがあります。この成分は測定システムに”正しい”信号として認識され、周波数特性に誤ったピークやディップを生じさせる原因になります。
K2補正を行うことで、この2次高調波成分の影響を数値的に除去し、実際の周波数特性に近い結果を得ることができます。これにより、製品の音響性能の正確な評価が可能になります。
測定方法とK2補正の適用例
K2補正は、主に以下のような手順で適用されます:
- 1. 測定対象にスイープ信号(例:1Hz~20kHz)を入力
- 2. マイクロホンで得られた出力信号を解析
- 3. 2次高調波(f0の2倍の成分)を分離し、その影響度を数値化
- 4. 解析ソフトでK2補正値を用いて補正
多くの専用音響測定システム(例えばB&K、Audio Precision、MLSSAなど)では、K2補正機能が組み込まれており、補正前後のデータ比較も可能です。たとえばK2補正を適用することで、200Hz~2kHzの帯域において最大3dB程度の差異が発生するケースもあります。

K2補正が重要な応用分野
K2補正は、以下のようなシーンで特に重要視されます:
- 無響室・半無響室でのスピーカー評価試験
- 自動車内音響のチューニングと検証
- 建築音響における吸音材の性能評価
- ヘッドホンやイヤホンなど小型音響機器の測定
- 高精度なオーディオ機器(ハイエンドスピーカー、アンプなど)の設計
また、ISOやJIS規格の試験でもK2成分の管理が求められることがあり、信頼性の高い測定には不可欠なプロセスです。
まとめ
K2補正値は、音響測定において正確性を高めるための重要な要素です。2次高調波歪みを正しく補正することで、製品の本来の性能を把握し、音響品質の最適化につなげることができます。
特に、精密な測定が求められる環境や、音響開発の現場では、K2補正の理解と活用が大きな差を生みます。これから音響測定に取り組む方も、すでに実践している方も、K2補正をしっかり押さえておきましょう。
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