音響計測 技術コラム
音響インテンシティとは
2024年3月5日
- HBK × Sonora 音響計測ソリューション
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音響パワー測定
振動する物体から放射される音響エネルギーは、その物体が発する音そのものです。音響パワーは、このエネルギーがどの程度の割合で放射されるかを示し、単位時間当たりに放出される「エネルギー量」を意味します。一方、音響インテンシティは、単位面積当たりを通過するエネルギー流量を表し、音の「強さ」を定量化する指標として使用されます。国際単位系(SI)において、音響インテンシティの単位面積は1平方メートル(m^2)と定義されており、そのため音響インテンシティの単位はワット毎平方メートル(W/m^2)となります。
この概念を用いることで、音源から放射される音響エネルギーの強さを具体的に測定し、音源の音響出力や音場内での音の分布などを分析することが可能になります。音響インテンシティの測定は、音響学、音響工学、環境音響など、多岐にわたる分野で重要な役割を果たしています。

音響インテンシティは、音響エネルギーの流れの方向性を含むため、大きさと方向の両方を持つベクトル量として定義されます。これは音響エネルギーが特定の方向へ流れることを意味し、その方向性を示す指標となります。この性質により、音響インテンシティは音場内の音響エネルギーの流れの方向や強さを評価するのに非常に有効です。一方で、音圧はエネルギーの大きさのみを示すスカラー量で、方向性を持ちません。
通常、音響インテンシティの測定は、音のエネルギーが流れるある単位面積に対して法線方向(つまりその面に垂直な方向)のインテンシティを測定することによって行われます。そして、音響インテンシティは単位面積あたりのエネルギー流量の時間平均値として定義されるため、一時的にエネルギーが行ったり来たりしている場合でも、その時間平均をとることにより実質的なエネルギー流量を捉えることができます。
音源が放射するエネルギーを通過する領域全体における空間平均ノーマルインテンシティを測定し、その面積を乗じることで、音源が発する総音響パワーを求めることができます。この方法により、音源の音響出力の強さを定量化することが可能です。また、音響インテンシティ(および音圧)は自由音場において逆二乗則に従います。これは、音源からの距離が二倍になると、音圧レベルが約6デシベル減少するという法則です。これにより、音源からの距離に応じて音圧やインテンシティがどのように変化するかを予測することができます。

音源からの距離が2倍になると、音が通過する球面の面積は4倍に増加します。これは、音源を中心とする球面の面積が半径の二乗に比例するためです。音源から放射される総音響パワーは一定であるため、音源からの距離が増すにつれて、そのエネルギーが広がる面積も増加します。
この面積の増加により、単位面積当たりに受けるエネルギー量、つまり音響インテンシティは距離が増すにつれて減少します。距離が2倍になると面積は4倍になり、その結果として単位面積当たりのインテンシティは1/4に減少します。これが音響エネルギーの逆二乗の法則の背景にある理由であり、音響学において非常に重要な原則の一つです。この法則により、音源からの距離に応じて音響インテンシティがどのように変化するかを定量的に評価することが可能となります。
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