音響計測 技術コラム
ISO 26101における新測定間隔ルールとは?
2025年6月6日
- HBK × Sonora 音響計測ソリューション
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音響パワー測定
無響室の逆二乗則検証を次のステージへ
音響試験において、試験空間の「正しさ」を担保する指標となるのが「逆二乗則の成立」です。これは音源からの距離が2倍になるごとに音圧レベルが6dB減衰するという理論的性質で、無響室が真の自由音場であることを証明する方法として国際的に使われています。
この逆二乗則の成立を確認するためには、試験マイクの配置と測定手順が非常に重要です。ここで近年、大きな規格変更がありました。それが「ISO 26101における新しい測定間隔ルール」です。
ISO 3745との違い:精度を高めるための再定義
これまで一般的に参照されていたISO 3745では、マイクロホン間の距離は「100mm以下」と比較的簡略なルールでした。
一方で、ISO 26101では以下のように周波数に応じた厳密な基準が新たに導入されました:
| 周波数帯域 | 測定間隔の最大値 |
|---|---|
| 1,000 Hz 以下 | 該当周波数の波長の1/10以下(λ/10) |
| 1,000 Hz 超 | 25 mm以下(固定値で明記) |
例えば、周波数が4,000 Hzのとき、その波長は約85mm。1/10で約8.5mmの間隔が必要となり、25mmの制限の中でもさらに厳しい設計が可能です。
トラバースと測定開始点:空間の立体的評価
ISO 26101は、測定間隔だけでなく、**マイクロホンを動かす方向(トラバース)**にも規定を設けています。
以下のような方向性で最低5方向が推奨されます:
- 二面角(三次元の隅角)に向かう
- 三面角(部屋のコーナー)に向かう
- 壁や天井の中央
- もっとも近い/遠い反射面
- 必要に応じた追加方向(例:開口部や吸音材付近)
また、測定開始点は「最低周波数の1/4波長位置」とされており、低周波域の成立性も担保します。
測定精度の進化と無響室設計への影響
この規格変更が意味するのは、従来のように「吸音楔を使えば無響室」といった単純な設計ではなくなったということです。室内音場の均質性と精度検証の仕組みそのものが新たな評価基準となったのです。
たとえば、設計段階から:
- マイクロホンの移動用リグやガイドレールの配置
- 測定対象の設置位置と反射面までの距離
- 精密な距離調整が可能な音源・マイク配置機構
などを念頭においた、構造的な柔軟性と幾何学的精度を両立した設計が必要になります。
当社の無響室設計:ISO 26101を前提にした空間構築
当社では、こうしたISO 26101の要件に適合するよう、次のような設計思想を取り入れています:
- BFW(Broadband Fractal Wedge)を中心とした高吸音構造により、広帯域にわたる逆二乗則の安定性を確保
- 測定環境の設計段階で1/10波長基準のマイク配置と動線をシミュレーション
- 精密な検証を可能にするためのトラバース方向の設計支援サービスを提供
これにより、音響製品の国際試験対応はもちろん、超音波センサや高周波機器の研究・開発にも最適な測定環境が実現できます。
まとめ:逆二乗則の「精度」が無響室の品質を決める時代へ
ISO 26101は、単なる測定ルールの改定ではありません。無響室そのものの本質を再定義し、設計者と測定者の両者に高度な理解と対応を求める規格です。
逆二乗則は、いわば音響試験の「真実の証明書」。その証明精度が1mm単位で問われる時代において、ソノーラの無響室はその精度と柔軟性で応えていきます。
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