音響計測 技術コラム
音響インテンシティの測定方法
2024年5月3日
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音響パワー測定

オイラー方程式
音響インテンシティは、音圧と粒子速度の時間平均の積です。音圧は1つのマイクロホンで比較的容易に測定できますが、粒子速度を直接測定するのは難しい場合があります。しかし、粒子速度は、圧力の勾配(ある瞬間における圧力の空間的変化率)と線形オイラー方程式から計算できます。近接する2つのマイクロホンで圧力の勾配を測定し、それから粒子速度を算出します。
オイラー方程式は、基本的には流体力学におけるニュートンの第二法則です。ニュートンの第二法則は、質量に作用する力とその質量の加速度との関係を示しています。力と質量が分かれば、加速度を求めることができます。時間積分を行うことで、速度を求めることができます。

オイラー方程式において、密度ρの流体を加速させるのは圧力勾配です。圧力勾配と流体の密度から、粒子の加速度を計算することができます。この加速度を積分すると、粒子速度が得られます。

有限差分近似法
圧力勾配は滑らかに変化する連続関数です。近接する2本のマイクロホンの音圧差を取り、その差をマイクロホン間の距離で割ることで、圧力勾配の近似直線式を得ることができます。この手法は有限差分近似として知られています。円周上の2点間に直線を引くことで、円の接線を求めるようなものです。
インテンシティの計算
粒子速度を算出するためには、圧力勾配の成分を積分する必要があります。粒子速度の推定は、プローブの音響中心である2本のマイクロホンの中間位置で行われます。この点における音圧は、2本のマイクロホンの平均音圧で近似されます。その後、音圧と粒子速度の信号を乗じて、時間平均を取ることで、インテンシティが計算されます。

音響インテンシティ分析システムは、プローブと分析器で構成されています。プローブは、単純に2つのマイクロホンの音圧を測定します。分析器は、音響インテンシティを求めるために必要な積分や計算を行います。
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